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金融機関が行う貸付はいわゆる不動産担保金融とは本質的に異なるのである。 しかし、実際に債権の延滞が発生すると担保不動産からの回収額いかんで不良債権の処理に要する時間も変わってくることは事実である。
したがって、担保評価にあたっては不動産の時価、ここでは市場での売却可能額を査定することがきわめて重要になってくる。 また、不幸にして不良債権化した債権についてその回収見込額を査定する際、担保不動産の時価評価は債務者あるいは保証人からの回収が見込めない場合は最終の回収額を左右するため、非常に重要と考えられる。
ここでは担保不動産の時価評価について検討してみたい。 それでは、金融機関で現実に行われている担保評価の手法を見てみよう。
一般的には次のような手順で行われている。 まず、担保不動産について、不動産市場における売買価格を一定のルールにより査定する。
この査定ではいわゆる原価法、すなわち土地の価格に建物の価格を積算する方法が採用されている。 それぞれの価格の根拠には、地価公示の公示価格・基準地価格・相続税路線価、建物については取得簿価等を用いている。
時点修正は公示価格や基準地価格の推移をもとに行っているケースが一般的である。 また、建物の減価修正は経済的耐用年数にもとづいて行っている。
次に、この市場売却価格に対して、金融機関個々で設定する掛け目、これを担保掛目とよぶが、これを乗じて担保評価額を求めることになっている。 金融機関によっては、その主たる営業エリア内の地図、公示地・基準地、路線価、過去に担保徴求した物件等といったものをデータ化したシステムを導入し、一定のルールで実地調査後、数値を入力すると担保評価額が求められるようになっている。
前述のように、これらのシステムにおいては積算法による担保評価が行われている。 実際には収益還元法による評価がシステムに組み込まれているところもあるようだが、運用しているところは少ないようである。

この担保評価手法(積算法)を活用する際には、たとえば通常の住宅ローン債権の担保不動産である戸建住宅、それも比較的購買層が見込める地域については、おおむね公示価格での取引が行われていると推定されることから非常に有効であると考える。 一方、需要者が少ないと考えられる地域に所在する戸建住宅等の場合はどうだろう。
バブル期に遠隔通勤圏に建てられ、やや人気が薄くなった住宅地などの場合、市場価格を公示価格等から求めているとすれば、この水準での取引は少ないケースが多いことから、もっと評価額の水準を下げる必要があることも考えられる。 つまり、現実の売却可能額での算出が必要となってくる。
さらに、現在の経済環境下における別荘地や住宅素地(見込地)、山林、新規流入者の少ない農家集落地域の物件等については、そもそも市場が成立しにくい状況にある。 公的指標の価格水準をそのまま採用することで担保評価額、回収見込額を査定すること自体に無理があろう。
また、本来投資物件と考えられる賃貸マンションや賃貸ビル等については、土地・建物の価格の合算である積算価格より、収益還元による収益価格の方が市場における説得力が高い。 「投資とは利回り重視が基本」である。
さらに一歩進んで考えると、担保不動産は即処分できるとは考えられない。 したがってこの期間に要する「期間割引」も重要と言える。
もちろんこれについては掛目という考え方を取りいれるのも一つの方法だが、不良債権市場における担保不動産の評価にあたっては、売却時期と売却価額を想定した上で、その間のキャッシュフロー(賃料など)の総和を求めている。 つまり、結果としてのキャピタルゲインではなく、インカムゲインを重視する考え方が優先される。

担保評価においてもこの考え方を取り入ると2次ロスが少なくなるのではないだろうか。 担保付不良債権の評価の流れであるが、少なくとも不良債権化したものだけにでも採用することは有効と思われる。
時価評価を考える前に、担保不動産売却は金融機関の貸付金における延滞時の最大回収手段であることから、「担保不動産の3原則」と呼ばれる、次の3つの条件が非常に強く要請される。 担保不動産の3原則安全性:自然災害等で損壊するものでないこと確実性:使用や収益が将来一定期間にわたり確実に入るものであること市場性:最終的には処分が前提となることから、市場で売却が可能なものであることそもそも、金融機関は預金者からお金を預かり、これを貸出等で運用して利息を配当することになっているわけである。
したがって、預金者保護の観点からも担保不動産についてはこの3原則を遵守しなければならない。 また、これらにそぐわない担保不動産の場合は評価額を付すべきではないと考えられる。
たとえば、崖地や急傾斜地のみの物件、市場性が乏しいと考えられる建物の建築ができない土地、開発可能性がない山林・原野等を担保不動産とすることは原則不可とされている。 何らかの事情で抵当権をつけても担保評価額はゼロと考えるべきである。
しかし、バブル狂想曲華やかしき頃は、これらの不動産を担保とすることが横行した。 売却できっこない不動産に何億もの抵当権が何重にもわたりつけられた。
その結果、不良債権の山が築かれた。 抵当証券の担保不動産で見受けられた例として、リゾート地の崖地や急傾斜地を担保とし、実現性の乏しい開発計画に基づいた担保評価を行っていたものがある。
抵当証券会社は本来、不動産時価の7掛け(70%)で不動産を評価し、それを上限に抵当証券を発行することになっている。 しかし、これらの物件について、本来的に担保適格性がないにもかかわらず担保不動産の価格を高額に査定した不動産鑑定士が鑑定協会の懲罰を受けたという例が最近数件見られた。
当然のことである。 回瀧産担保評価と最低制競売〉次に、やや視点を変えて不動産競売の「最低売却価格(俗に最低競売価格ともいわれる)」について検討してみよう。
最低売却価格は不動産の時価ではないが、金融機関の不動産担保評価額や回収見込額について最低売却価格をもって計上しているケースは多い。 この場合の回収見込額は本来時価を前提とすべきだと考えられよう。
しかし、すでに競売に持ちこまれている担保不動産で、最低売却価格による計上を行っている例を多く金融機関の検査でもこれを認めているようだ。 しかし、仮に、時価と大きなギャップが発生している場合、果たしてこれは妥当なものか、ここで考察する。

不動産を競売により処分する場合、裁判所は競売開始決定後、現況調査を行うとともに評価人(主として不動産鑑定士)に最低競売価格(法的には最低売却価格)を求めさせる。 この最低競売価格は一体どういう趣旨の価格なのであろうか考えてみたい。
法的根拠民事執行法第60条には次のような規定がある。 民事執行法第60条(最低売却価額の決定等)執行裁判所は、評価人の評価に基づいて最低売却価額を定めなければならない。
執行裁判所は、必要があると認めるときは、最低売却価額を変更することができる。 最低売却価額の法的根拠は、この法60条に基づく。

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